『流浪の月』を読んだり観たりして、「ケチャップのシーンが妙に印象に残った…」と感じた方は多いのではないでしょうか?
主人公の文(ふみ)が「なぜ更紗の口についたケチャップを拭う場面が描かれているのか?」と疑問に思った方に向けて、この記事ではケチャップを拭う意味や背景を深掘りしていきます。
作品全体のあらすじや、文の下半身にまつわる病気は何だったのか、小説に登場する心に残る言葉、映画版との違い、さらには話題になったラブシーンや演出方法まで、気になるポイントを網羅的に解説。
『流浪の月』の世界観をもっと深く理解したい方、自分の中のモヤモヤを言語化したい方に向けて、わかりやすく丁寧にまとめています。
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『流浪の月』あらすじ(ネタバレあり)

登場人物
名前 (読み) | 年齢 | 主人公との関係性 | 人物の特徴 (性格・背景・行動など) |
---|---|---|---|
家内 更紗 (かない さらさ) | 9歳(過去)→24歳(現在) | 主人公 | 幼少期に伯母の家で従兄から虐待を受けており、9歳のとき「家内更紗誘拐事件」の被害者となった少女(実際は佐伯文に保護されていた)。以降、世間から“可哀想な被害者”として扱われ続ける人生に葛藤している。 |
佐伯 文 (さえき ふみ) | 19歳(大学生時)→34歳前後(現在) | 誘拐事件の犯人とされた男性 | 更紗が幼い頃に雨宿り先として招き入れてくれた青年。厳格な母親に育てられた生真面目な性格で、生活も規則正しかった。誘拐事件以降は世間から異常者扱いされ、現在はひっそりとカフェを営んで暮らしている。 |
中瀬 亮 (なかせ りょう) | 不明(20代程度の社会人) | 更紗の恋人 | 更紗と同棲する一見誠実な恋人だが、実は支配欲が強く嫉妬深い。更紗への束縛が激しく、感情が昂ると暴力を振るう癖がある。更紗が文と再会すると彼女を疑い、文の過去をSNS上に晒すなどエスカレートした行動に出る。 |
谷 あゆみ (たに あゆみ) | 不明(社会人) | 文の恋人 | 文を支える現在の恋人。物言いがきつく現実的な性格の女性で、更紗に対して文に近づかないよう厳しく警告する。必要以上に踏み込まず文の心の傷に寄り添っており、文にとって精神的な支えとなる存在。 |
あらすじ
9歳の少女・家内更紗は、家庭での虐待から逃れるように、雨の日に公園で出会った大学生・佐伯文の家に身を寄せる。
更紗にとっても、文にとっても自由で楽しい日々だった。
文は更紗に手を出すことなく、ただ静かに一緒に暮らしていたが、周囲には「誘拐事件」として通報され、文は逮捕。
更紗は“被害者”、文は“加害者”として扱われ、ふたりは引き裂かれる。
15年後。24歳になった更紗は、恋人・亮と同棲していたが、彼は独占欲が強く、支配的な態度で彼女を追い詰めていた。そんな中、文と偶然に再会。世間の目にさらされながらも、ふたりは再び惹かれ合う。
文には新しい恋人・谷あゆみがいたが、更紗との再会を機に別れを決意。更紗も亮との関係を終わらせ、過去に交わした“静かで確かな絆”をもう一度取り戻していく。
最後、更紗と文は恋人ではなく、互いを守り合える“居場所”として共に生きていく道を選ぶ。
この物語は、加害者と被害者という一面的なレッテルでは語れない、心の傷と救済を描いた物語です。
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ケチャップを拭う意味を考察

ケチャップを拭った理由
文と幼い頃の更紗が、一緒に暮らしていたとき、文が更紗の唇についたケチャップを拭うシーンがあります。
文がケチャップを拭った理由は、更紗の唇に触れるためです。
ケチャップを拭った意味
なぜ、文は更紗の唇を触ったのか?
それは、更紗の唇に触れることで欲情を感じ、本物の小児性愛者なれれば、という希望を見出したかったため。
文は、第二次性徴がこないという病気を患っていた。性器も子どものまま未発達。
そんな自分は、大人の女の人を愛すことはできない、自分は小さいな子どもが好きなのだ、と言い聞かすことで自分を慰めていました。
そんな希望をこめて、更紗の唇についたケチャップを拭うふりをしながら、唇に触れた文。
だけど、残念ながら更紗の唇を触っても、欲情は湧いてきませんでした。
文の行動を考察
第二次性徴がこないという病気に苦しんだ文。
しかも、その病気によって、母親からも見捨てられた悲しみを抱いていた。
そのことによる絶望感は、想像もできない辛さだったと思います。
そんなところに現れた自由奔放な少女。
病気によって今後の人生の中で大人の女性を愛することはできない。
だけど、子どもである更紗を本当に愛することができれば、文の心は救われる。
現実は甘くなく、更紗を女性として愛することはできませんでした。
不完全な身体でも、そのままの文を愛してくれる人。そんな人が現れ、その人を文が愛することが出来た時、文の心は救われるのではないかと思います。
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下半身にまつわる病気を考察

文の下半身にまつわる病気とは?
小説内で病名は、記されていません。
小説内に出てくる、文の病気の特徴は、以下の通り。
- 声変わりしない
- 痩身
- 体毛も薄い
- 高身長
- 手足が長い
- 子どものまま未発達な性器
- 病状には幅がある
- 治療には早期治療が重要
以上のことから、推測される病気は、「性腺機能低下症(性腺機能不全)」またはその一種である「カルマン症候群」の可能性が高いようです。
思春期がこない(第二次性徴が起きない)まま大人になる、先天性の病気です。
脳の一部(視床下部)がうまく働かず、性ホルモンの指令が出ないため、
- 声変わりしない
- ひげや体毛が生えない
- 性器が未発達
- 背が高く手足が長い
などの特徴が見られます。
また、においが分からない(嗅覚障害)を伴うことが多いのも特徴です。
原因は遺伝子の異常で、早期に見つけてホルモン治療を始めれば改善できます。
放置すると、体や心の発達に大きな影響が出るため、早期診断がとても重要です。
文の下半身の病気について考察
「この木はハズレね」
家の庭に埋めた成長しない「トネリコ」を見て、文の母親が言った言葉です。
子供にとって、母親に愛されていないというのは、とても辛いことですよね。
母親の期待に応えられない自分、身体も成長せず、不完全な自分。
学校でも家でも居場所がなかった文が、更紗という”居場所”を見つけられた。
お互いに、分かり合える存在を見つけることができたことは、この物語の救いですね。
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小説内の『心に残る言葉』

「流浪の月」には、小説内に数々の名言が出てきます。
個人的に心に残った言葉は、以下の通りです。
「重いことは、それだけで有罪だわね」
更紗の母親である灯里(あかり)が言った言葉。灯里は自由奔放な性格。
「人生の味がする」
更紗の母親である灯里(あかり)が言った言葉。ダイエットに飽き、フライドチキンにかぶりついた時に言った言葉。
「世間は別に冷たくない。逆に出口のない思いやりで満ちていて、私はもう窒息しそうだ」
更紗が、誘拐された女児ということを知っている人から優しくされることで、感じていたこと。
「優しい人だ。だからこそ、こんな優しい人とも分かり合えないことに絶望してしまう」
更紗の勤めるバイト先の店長に優しい言葉をかけられたときの更紗の想い。
「この世界のどこかに私を掴んで離さないでいてくれた人がいる。それは15年間私を支え続けてくれた」
警察に連れて行かれようとしている更紗の腕を文が掴んでくれた。
「こんなに思いやりが溢れている世界で、これほど気遣ってもらいながら、私は絶望的に分かり合えないことを思い知らされるばかりだ」
警察の人に、ケアを進められた時の更紗の想い。
「あのトネリコは僕だ。ハズレの僕だ。僕がハズレだと分かったら、母親は僕のことも引っこ抜いてしまうだろう。」
成長しないトネリコを引っこ抜いた母親を見て、文が思ったこと。
「更紗の小さな手だけが僕の救いだった」「あの瞬間、僕たちは互いの存在のすべてを二人で支えあっていた」
更紗が警察に連れていかれようといている時に、文と更紗はお互いの手を握り合っていた。
「私は文に恋をしていない。キスもしない。抱き合うことも望まない。けれど今まで体をつないだ誰よりも文と一緒にいたい」
更紗が文の病気について、本人から告白された時の想い。
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『流浪の月』映画について

映画基本情報
項目 | 内容 |
---|---|
映画名 | 流浪の月(るろうのつき) |
監督 | 李相日(り・さんいる) |
原作 | 凪良ゆう『流浪の月』(第17回本屋大賞受賞作) |
主演 | 広瀬すず(家内更紗 役) 松坂桃李(佐伯文 役) |
公開日 | 2022年5月13日 |
上映時間 | 150分 |
映画のラブシーンは本当にやってる?
映画『流浪の月』では、広瀬すずさんと松坂桃李さんの繊細な演技が話題になりましたが、ラブシーンに見える描写について「本当にやってるの?」と気になった方も多いようです。
結論から言うと、実際に性行為をしているわけではありません。
演出やカメラワーク、俳優の表情や呼吸など、リアルに見せる工夫がされており、あくまで映像としての表現です。
この作品では、あからさまな性描写よりも、登場人物たちの心の揺れや距離感を丁寧に描くことが重視されています。
下半身どうやって撮影?特殊メイクなのか?
映画『流浪の月』には、登場人物の下半身に関する描写が印象的に描かれる場面があります。そのリアルさから「これって本物?」「特殊メイクなの?」と疑問に思った方もいるかもしれません。
実際のところ、こうしたシーンではカメラアングルや照明、編集技術、さらには特殊メイクやパーツモデル(代役)などを組み合わせてリアリティを演出するのが一般的です。
『流浪の月』でも同様に、役者の体に直接的な負担をかけずに、繊細な描写を成立させる映像技術が使われていると考えられます。
グロいシーンはあるのか
『流浪の月』は、誘拐や虐待といった重いテーマを扱っているため、「グロいシーンがあるのでは?」と心配する方もいるかもしれません。
ですが、血が出るような暴力的・残酷なシーンや、視覚的にショッキングな描写はありません。
精神的に苦しくなる描写や、胸が締めつけられるような場面はありますが、いわゆる「グロい」と感じる映像表現はほとんどないため、過激な映像が苦手な方でも鑑賞しやすい作品です。
原作ラストと映画のラストは同じ?
『流浪の月』の原作と映画は、物語の大筋や登場人物の関係性は共通していますが、ラストの描き方には違いがあります。
原作小説では、更紗と文が恋人ではなく、“安心して共にいられる存在”として静かに寄り添うような関係性に落ち着く結末が描かれています。恋愛とも友情とも言い切れない、でも確かな絆を感じさせるラストです。
一方、映画版もこの関係性の本質は崩さずに描いていますが、映像だからこその余韻や象徴性を重視した終わり方となっており、原作よりもやや“希望”を感じさせる印象を受けた人も多いようです。
つまり、結末の方向性は同じでも、表現のトーンや印象に違いがあるというのがポイントです。原作を読んだあとに映画を観ることで、より深く物語を味わえる構成になっています。
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流浪の月は無料で聴ける
僕は「流浪の月」を、オーディブル でも聴きました。
そのため、リラックスした状態で目や脳が疲れることなく聴けますよ。プロの方が読んでくれるので、読書とはまた違った感覚で楽しめます。
初めて入会する場合は、30日間の無料期間があります。無料期間内に解約すれば、料金はかかりません。
聴き放題本数 | 20万本 |
月額料金 | 1,500円(税込) |
支払い方法 | クレジットカード デビットカード ※現金や電子決済は不可 |
お試し期間 | 初めての入会で、30日間無料 (無料期間内に解約すれば、月額料金はかからない) |
朗読 | 土師 亜文 |
再生時間 | 10時間21分 |

ユク
オーディブルは通勤中や家事の時などのスキマ時間にも聴けるので、「本を読む時間がない」という人にもおすすめです。
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『流浪の月』ケチャップを拭う意味:まとめ
文が更紗の唇についたケチャップを拭う――その行為には、文自身の心の葛藤と救いへの願いが込められていました。
小説を通して描かれるのは、文の抱える「身体が大人になれない」ことへの絶望と、自分を“本物の小児性愛者だ”と思い込もうとする苦しみ。そして、その中で唯一心を通わせた存在が、幼い更紗でした。
唇に触れることで自分の気持ちを確認しようとした文は、結局、欲情できなかった。
そこには、文が本当に求めていたのは性的な関係ではなく、理解されること・許されること・つながることだったという真実が浮かび上がります。
そして『流浪の月』の魅力は、文と更紗が“恋愛”ではなく、他者の痛みを理解し合う関係として再び寄り添う姿にあります。
何気ない仕草に隠された深い意味を知ることで、『流浪の月』という作品の本質に、少し近づけるかもしれません。
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