呉勝浩氏のベストセラー小説『爆弾』について、「面白くない」という評価を目にして、本当のところどうなのか気になっていませんか?
この記事では、爆弾(小説)が”本当に面白くないのか?”について、実際の感想レビューを忖度なしで紹介します。

ユク
僕自身の感想だけではなく、ネット各所の総合的な評判・口コミも紹介しますね。
あらすじも「ネタバレあり」と「ネタバレなし」両方のバージョンで紹介するので、すでに爆弾を読んだ人も、読んでない人も、どちらも楽しめる内容になっています。
僕は冊子ではなく、オーディブル(本の朗読サービス)で、爆弾を聴きました。
爆弾はオーディブルで聴くのがおすすめ!
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爆弾(小説)は面白くない?実際の感想を紹介

『このミステリーがすごい! 2023年版』と『ミステリが読みたい! 2023年版』で1位を獲得した『爆弾』ですが、「面白くない」という声があるのも事実です。
ここでは、僕自身が実際にオーディブルで聴いた率直な感想と、ネット上の様々な評価を紹介します。

ユク
感想部分にネタバレはないので、安心して読み進んでください。
実際に爆弾を聴いた感想レビュー
結論から言うと、僕は『爆弾』を面白いと感じました!
最初の数時間は正直、「あれ?思ったより淡々としてるな」と感じたのも事実です。スズキタゴサクのダラダラした語り口、意味ありげで掴みどころのない会話。取調室のシーンが延々と続いて、「これ、いつ盛り上がるんだろう?」と不安になりかけました。
爆弾が仕掛けられた場所を探すクイズ要素、刻一刻と迫るタイムリミット、そしてスズキタゴサクの真意が少しずつ見えてくる緊張感。
オーディブルで聴いていたので、ナレーターの方の絶妙な間の取り方や、声のトーンの変化が臨場感を倍増させてくれました。
ただ、万人受けする作品ではないとも感じました。
前半のスローペースに耐えられない人、キャラクターの心理描写より派手なアクションを求める人には、確かに「面白くない」と感じられるかもしれません。
でも、じっくり人間の本質を見つめるような重厚なミステリーが好きな人なら、絶対にハマる作品です。

ユク
僕自身、聴き終わった後もしばらくスズキタゴサクのことが頭から離れませんでした。
評価:★★★★☆(5点満点中4点)
ネット各所の感想レビュー
僕以外の方のネット各所の評判・口コミを紹介しますね。
全体的には、9割方がよい評判でした。
よい評判・口コミ
良い評判・口コミでは、「ストーリーが最高に良かった」「心理戦に引き込まれた」「緊迫感・緊張感のある展開だった」という評判が多かったです。
オーディブルでは、ナレーションが素晴らしく、作品の完成度を上げていたという意見がありました。
- 「スズキタゴサクと刑事のやりとりにハラハラが止まらない。ページをめくる手が止まりませんでした」
出典:読書メーター『爆弾』感想・レビュー - 「予想を超える展開に驚愕」
「最後まで面白く読めた。警察小説としても楽しめる内容で、主人公の鈴木タゴサクが魅力的」
出典:Amazon『爆弾』カスタマーレビュー - 「スズキタゴサクというキャラクターが秀逸」
「タゴサクという男に迫っていく展開もとても面白かった。怒涛の展開とタゴサクvs警察の頭脳戦から目が離せない」
出典:note「連続爆破を巡る取調室の心理戦|小説感想「爆弾」呉勝浩」 - 「ページ数が多くても一気に読めた」
「ページ数多そうなので怖気づいて積み読していたんですが、読んでみたらめちゃくちゃ面白い…!1日かからず読み切りました」
出典:nomidoku「小説『爆弾』ネタバレあらすじ・感想」
- ストーリーはもちろん!
一度聴くとやめられません。昨年22年からAudibleをはじめて、23年1月でまで聴いたのは30冊くらいですが、その中では一番良いです。
ナレーションも素晴らしい。特に男性の登場人物多い中、声色を一人一人変えながら登場人物の姿形まで想像させることのできるナレーションは圧巻。音声なのに映画を見ているようで、ジェットコースターのようなストーリー展開と相まって、没入感が半端ないです。
私は仕事帰りに散歩するのが日課ですが、健康のためではなく、小説聴くために散歩するようになったのは、この小説に出会ってからです。 - ストーリーの面白さをナレーションで更に一段引き上げてくれている名作!ナレーションがくどいという評価が沢山見受けられますが、くどいと思うなら本を読めばいい。Audibleだからこそ味わえる映画のような臨場感。最高でした。私は今後もこのような聞いてワクワク出来る映画のようなナレーションの作品をどんどん出してもらいたい!
- 夜中に1人で聞き始めましたが、あまりの迫力に夜明けまで聴いてしまいました。ストーリーが秀逸なのもそうですが、一人一人が生々しい。怖いぐらいです。
悪い評判・口コミ
悪い評判・口コミでは、「中だるみがあった」「動機が理解できない」「読後感が悪い」等の意見がありました。
オーディブルでは、ナレーターの方が、キャラクターによって声色を変えながら話しているのが嫌だったと言う声がありました。
- 「冗長で読み進めるのがしんどい」
「文章もキャラクターも悪くないのですが、スズキタゴサクの意味深な語りが延々と続くこと、ストーリー展開がダラダラしている点が耐えられませんでした」
出典:Yahoo!知恵袋「呉勝浩さんの小説『爆弾』を読んだ方に質問です」 - 「動機に納得できない」
「会話での説明が多く、読みやすいが深みに欠ける印象。スズキタゴサクの動機もいまいち納得できず」
出典:読書メーター『爆弾』感想・レビュー - 「クイズのやりとりが退屈」
「特に犯人の動機やクイズという切り口から、そういった趣旨のやりとりがずっと続くところに退屈しました。内容も一般的で正直全く響きません」
出典:ブクログ『爆弾』感想 - 「気持ちのよさは無い」
「物語としては面白かったですが、気持ちのよさとかは無い。そんな感じ」
出典:はてなブログ「爆弾 感想 レビュー 著者:呉勝浩」
- 鈴木と刑事のやり取りがメインであとの真相の解明はお茶を濁して終わりです。
特にそれぞれの動機がサラッと触れるのみならず、どうにも腑におちないものばかりなのでえ?そんなことで?の連続です。
動機に納得してなるほど!そういうことだったのかと納得するような読後感は全くありません。
なんだか意味ありげな鈴木の独白に最初はひきつけられますが、最後は完全な尻切れとんぼです。 - ナレーションは素晴らしい。
でも聞き終わるとイヤな気持ちになります。ストーリーは嫌いです - やたら口説い表現の連発で、結局何を言いたいのか、どういうストーリーにしたいのか、さっぱり分からなかった。
「面白くない」と感じた読者の具体的な理由
『爆弾』は、多くの賞を受賞した評価の高い小説ですが、「面白くない」と感じる読者もいます。
その理由を整理すると、主に3つのポイントに分けられます。
① ストーリー展開が「遅い」と感じる
『爆弾』の前半は、ほとんどが取調室での会話劇です。
爆弾魔・スズキタゴサクと刑事たちの会話が延々と続き、派手なアクションや事件の進展が少ないため、「テンポが悪い」「中だるみしている」と感じる人が多いようです。
実際に「いつ爆発するの?」「緊張感が続かない」といった声もあり、ミステリーというよりは心理戦・思想劇に近い構成が、好みを分ける部分になっています。
② スズキタゴサクの動機や言動が理解しづらい
物語の核となる人物・スズキタゴサクは、非常に掴みどころのないキャラクターです。
彼の話す内容が哲学的で抽象的なため、「結局この人は何がしたいの?」「動機が弱い」と感じる読者も少なくありません。
作者・呉勝浩さんは「現代社会の不条理」や「人間の内面の闇」を描こうとしていますが、その意図がすぐには伝わりにくく、結果として「意味がわからない」「難しい」という印象を与えてしまうようです。
③ 読後感が“スッキリしない”
物語のラストも、完全なハッピーエンドではありません。
爆弾事件の真相が明らかになっても、どこかモヤモヤが残る終わり方で、「後味が悪い」「救いがない」と感じる人が多いです。
ただ、この“気持ち悪さ”こそが『爆弾』という作品の狙いでもあります。
人間の愚かさや社会の矛盾をあぶり出すことがテーマになっており、「気持ちよく終わらない」構成は意図的なのです。
『爆弾』が「面白くない」と言われるのは、決して作品の完成度が低いからではなく、
読者の期待と作品の方向性がズレていることが原因だと言えます。
派手な事件解決やスカッとする展開を求める人には合わないかもしれませんが、
深いテーマ性や人間の本質に迫る物語を求めている人には、間違いなく刺さる一作です。
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爆弾(小説):あらすじ

登場人物
| 登場人物名 | 役割・立場 | 特徴・人物像 |
|---|---|---|
| スズキタゴサク | 謎の中年男性 爆破予告をする重要参考人 | 49歳。肥満体型で頭頂部に10円ハゲ。酔って自販機と店員に暴行し逮捕される。取調室で「霊感がある」と主張し、爆破を次々と予告する。掴みどころのない話し方で、本名・素性は一切不明。異常な動機を持つ謎の人物。 |
| 類家(るいけ) | 警視庁捜査一課 特殊犯捜査係の交渉人 | 頭脳明晰でスズキの出すクイズに挑む中心人物。冷静沈着で論理的思考に優れ、スズキと真正面から対峙する。事件解決の鍵を握る刑事。 |
| 清宮輝次(きよみや てるじ) | 警視庁捜査一課 特殊犯捜査係・類家の上司 | 穏やかな物腰でスズキとの取り調べを担当する。経験豊富なベテラン交渉人で、類家を補佐しながら捜査を指揮する。 |
| 長谷部有孔(はせべ ゆうこう) | 元野方署のベテラン刑事 (故人) | 4年前まで「野方署の番人」と呼ばれた優秀な刑事。しかし事件現場での不祥事が週刊誌に暴露され、退職後に自殺。事件の重要な鍵を握る人物。 |
| 石川明日香(いしかわ あすか) | 長谷部有孔の元妻 | 長谷部の自殺後、家族離散し生活苦状態だった。 |
あらすじ(ネタバレなし)
ここでは、『爆弾』のストーリーをネタバレなしで紹介します。これから読む(聴く)予定の方も安心してご覧ください。
事件の始まり:謎の中年男の逮捕
物語は、東京都中野区の野方警察署から始まります。
酔っ払って自動販売機を蹴り飛ばし、止めに入った酒屋の店主を殴り飛ばした中年男が連行されてきました。年齢は49歳、肥満体型で頭頂部には大きな10円ハゲ。スズキタゴサクという、いかにも偽名らしき名前を名乗ります。
一文無しで身元も不明。酔っているせいか「記憶がない」と言いながら、取調官の等々力刑事に対して軽い調子で話し続けます。
的中する「爆破予告」
ところが、スズキは突然こう言い出しました。
「霊感があるんです。秋葉原あたりで、何か事件が起こります」
刑事たちは相手にしませんでしたが、その5分後——本当に秋葉原の廃ビルで爆発が発生したのです。
さらにスズキは「次は1時間後に爆発する」と予告。その言葉通り、1時間後に東京ドームシティでも爆発が起こります。
二度の爆破予告を的中させたことで、スズキタゴサクは連続爆破事件の重要参考人となりました。
取調室での心理戦
警視庁捜査一課の交渉人・清宮輝次、そして頭脳明晰な部下の類家が、スズキの取り調べを担当することになります。
スズキは取調室で、とりとめのない雑談を延々と続けます。阪神タイガースの話、半獣半人の妖怪、焼き肉のタン…。一見無関係な話の中に、次の爆弾のヒントとなるクイズが隠されているのです。
類家はスズキの出すクイズに挑み、次々と爆弾の場所と時刻を解き明かしていきます。
浮かび上がる「長谷部有孔」という名前
スズキが突然口にした「ハセベユウコウ」という名前。
長谷部有孔は、4年前まで野方署で「番人」と呼ばれた優秀なベテラン刑事でした。しかし、事件現場での不祥事が週刊誌に暴露され、退職後に自殺。野方署の汚点として記憶されています。
なぜスズキは長谷部の名前を出したのか? 二人にはどんな関係があるのか?
捜査陣は長谷部の家族に連絡を取り、事件の背景を探り始めます。
次々と起こる爆発、そして犠牲者
スズキのクイズを解いて爆弾の場所を特定しようとする警察ですが、完全には防ぎきれません。
九段下の新聞販売所では間一髪で被害を防いだものの、代々木公園南門では60名以上を巻き込む大規模な爆発が発生してしまいます。
さらに、スズキが潜伏していたとされるシェアハウスでも爆発が起こり、警察官の矢吹が重傷を負い、長谷部の長男・辰馬が死亡。シェアハウスからは他にも2人の遺体が発見されます。
スズキタゴサクとは何者なのか?
取調室での会話、爆弾捜索、そして浮かび上がる長谷部一家の過去——。
複数の視点が同時進行で描かれ、少しずつ事件の全貌が明らかになっていきます。
スズキタゴサクは本当に爆破犯なのか?
彼の目的は一体何なのか?
そして、まだ爆発していない爆弾はどこにあるのか?
緊迫感あふれる心理戦の果てに待ち受ける、衝撃の真相とは——。
あらすじ(ネタバレあり)
事件の真相:共犯者たちの存在
類家は取調室でのスズキとのやり取りから、ある仮説に辿り着きます。
この事件はチームプレイだ——。
秋葉原、東京ドームシティ、九段下、代々木。爆破場所に統一性がないのは、複数の人間がそれぞれの「恨み」を晴らすために爆弾を仕掛けたからではないか。
シェアハウスで発見された遺体は、山脇と梶という若い男たち。二人は服毒自殺していました。死後3日程度と推定され、爆発を見届けることなく命を絶っていたのです。
- 山脇:飲料メーカーの配達員。自動販売機を補充する仕事をしており、山手線各駅の自販機に爆弾を仕掛けた。
- 梶:九段下の新聞販売所を素行不良でクビになった男。その販売所に爆弾を仕掛けた。
- 辰馬:長谷部有孔の長男。父親の不祥事と自殺によって絶望し、シェアハウスで自殺志願者を集めて爆弾テロを計画した。
彼らはそれぞれが苦い思い出を持つ場所に爆弾を仕掛け、計画をスズキに託して自ら命を絶ちました。
スズキタゴサクの異常な動機
では、スズキタゴサクはなぜこの計画に協力したのか?
取調室に、矢吹の右足を失った怒りから「スズキを殺す」と飛び込んできた倖田沙良。その殺意と憎悪を向けられた瞬間、スズキは喜びました。
スズキにとって、殺意や憎悪の感情を向けられることは——**「自分が望まれること」**だったのです。
破壊されたいと欲望されること。憎まれること。それこそがスズキの存在意義であり、彼が爆破計画に協力した理由でした。
普通の人間には理解不能なこの動機こそが、スズキタゴサクという人物の本質だったのです。
山手線「全駅」爆破の恐怖
類家は次の爆破場所として阿佐ヶ谷駅を特定しますが、駅構内からは何も見つかりません。
しかし午後4時、阿佐ヶ谷駅の自動販売機の中に隠された爆弾が爆発。避難誘導すらできておらず、甚大な被害が出ました。
さらに恐ろしいことに、爆発は阿佐ヶ谷だけではありませんでした。
山手線の各駅で、反時計回りに次々と爆弾が爆発していったのです。
スズキの「丸ごとの駅」という発言は、「山手線の丸をなぞるように」という意味だったのです。飲料配達員だった山脇なら、簡単に自販機型の爆弾を仕掛けることができました。
石川明日香の真実
事件の核心には、もう一人の重要人物がいました——石川明日香、長谷部有孔の元妻です。
実は、明日香は長谷部の自殺後、家族離散して路上生活を送っていました。そのホームレス時代に、スズキタゴサクと知り合っていたのです。
辰馬は路上で暮らす母を発見し、シェアハウスに住まわせます。しかし、息子が爆弾テロを計画していることを知った明日香は、辰馬を殺害してしまいます。
息子を殺した明日香は、ホームレス仲間だったスズキに助けを求めました。そしてスズキは、この非常事態を利用して辰馬たちの計画を「自分のもの」にしようとしたのです。
最後の爆弾
製造されたであろう爆弾は、すべて見つかったわけではありません。
最後の1個が、どこかに残っているはず。
類家は、スズキがその最後の爆弾を明日香に送っており、彼女が野方署に来ると予測します。
実際、明日香は野方署の取調室に向かい、スズキもろとも自爆しようとしました。しかし、倖田沙良が階段の踊り場で明日香を抱きとめます。
明日香が爆弾のボタンを押しましたが——爆発は起こりませんでした。
リュックの中身は、ただの洋菓子の箱。スズキは明日香を騙していたのです。
事件の「その後」
事件から1ヶ月後。
石川明日香は容疑を否認し続けています。すべてスズキの仕業だと主張し、辰馬殺害の容疑で裁判にかけられることになりました。
一方、スズキタゴサクは「霊感」「記憶喪失」「催眠」を一貫して主張。決定的な物証はなく、本籍すら確認できないまま、世論に押される形で起訴されました。
そして——最後の爆弾は、いまだに見つかっていません。
人々はやがてスズキタゴサクの顔を忘れるでしょう。穏やかな日常が戻ってきます。
しかし、どこかに隠された爆弾の恐怖は、消えることはないのです。
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爆弾(小説)ストーリーを徹底考察(ネタバレあり)

物語のストーリーについて、より深く掘り下げて考察していきます。
「最後の爆弾」が見つかっていない意味
物語のラストで、最後の爆弾はいまだに発見されていないという事実が明かされます。
スズキタゴサクという存在が消えても、彼が残した「悪意」は社会のどこかに潜み続けている——。この結末は、私たちの日常にも「見えない爆弾」が存在していることを暗示しています。
いつ爆発するかわからない不安、予測できない悪意。
現代社会が抱える恐怖そのものな感じがします。
長谷部有孔の「不祥事」が意味するもの
長谷部有孔は、事件現場で自慰行為をするという不祥事を週刊誌に暴露され、退職後に自殺しました。
一見すると「自業自得」とも思える行為ですが、作中ではこの不祥事が異常なまでに糾弾される様子が描かれています。
昨日まで仲間だった刑事たちが手のひらを返し、長谷部を徹底的に批判。家族は離散し、本人は命を絶つまで追い詰められました。
ここで呉勝浩氏が問いかけているのは、「正義」の名の下に行われる”私刑”の残酷さです。
確かに長谷部の行為は許されるものではありません。しかし、一つの過ちで人生のすべてを否定され、死に追いやられるほどの制裁が妥当だったのか?
SNSでの炎上、過剰なバッシング、容赦ない集団リンチ——現代社会でも日常的に起きている現象を、長谷部のエピソードは鋭く描き出しています。
辰馬たち「自殺志願者」の爆弾テロ
辰馬、山脇、梶——彼らはそれぞれが社会に絶望し、自殺を選んだ若者たちです。
しかし彼らは、ただ静かに命を絶つのではなく、「爆弾テロ」という形で社会への復讐を選びました。
- 辰馬:父親を死に追いやった社会(警察組織)への怒り
- 梶:自分をクビにした新聞販売所への恨み
- 山脇:自分が働いていた会社へのダメージ
それぞれが個人的な恨みを持つ場所に爆弾を仕掛け、自分たちの存在を最後に「爆発」させることで証明しようとしたのです。
ここには、「社会から見捨てられた者たちの絶望的な叫び」が込められているようですよね。
孤独、疎外感、居場所のなさ——そんな感情が極限まで膨れ上がったとき、人は「自分の存在を証明する」ために破壊的な行動に走ることがある。
この恐ろしい現実を、『爆弾』は容赦なく突きつけてきます。
「クイズ」という形式に込められた意図
スズキタゴサクが爆弾のヒントを「クイズ」という形で出す——この設定には、深い意味があるように思います。
クイズは一見、ゲーム的で軽薄な印象を与えます。しかし、それこそがスズキの狙い。
人の命がかかった状況を「ゲーム化」することで、スズキは警察を、そして社会を嘲笑しています。
「お前たちは、俺のクイズを解かなければ人を救えない」——この構図は、圧倒的な支配関係を示しています。
さらに、クイズに正解しても完全には爆発を防げないという展開は、「努力しても救えない」という無力感を読者にも感じさせます。
これは現代社会の縮図のよう。どれだけ努力しても報われないこと、頑張っても救えない命があること——その理不尽さを、クイズという形式が象徴しています。
「爆弾」が象徴する「人間の心の闇」
タイトルの『爆弾』は、物理的な爆発物だけを指しているのではありません。
人間の心の中にある「怒り」「憎悪」「絶望」という感情こそが、本当の爆弾です。
- 辰馬の「父親を失った絶望」
- 明日香の「息子を殺してしまった罪悪感」
- 倖田沙良の「スズキへの殺意」
- そしてスズキタゴサクの「憎まれたい欲望」
これらの感情は、いつ爆発してもおかしくない「心の爆弾」として、登場人物たちの内側にずっと存在していました。
そして、それは読者である私たち一人ひとりの心の中にも、確かに存在しているものではないでしょうか。
爆弾(小説)登場人物を徹底考察(ネタバレあり)

スズキタゴサク:「憎まれたい」という異常な欲望
『爆弾』の核心であり、最も理解しがたい人物——それがスズキタゴサクです。
彼の動機は、「殺意や憎悪を向けられることで、自分が望まれていると感じる」という、常識では理解不能なものでした。
普通の人間は「愛されたい」「認められたい」という承認欲求を持ちます。しかしスズキは、その対極にある「憎まれたい」「破壊されたい」という歪んだ欲求を持っていました。
一見、理解不能に思えますが、視点を変えれば、スズキもまた「自分の存在を確認したかった」人間かもしれません。
愛情でも憎悪でも、感情を向けられることは「自分が認識されている証」です。スズキにとって最も恐ろしいのは、誰からも何も感じられない「無」の存在になることだったのだと思います。
だからこそ彼は、多くの人を巻き込む爆弾テロに協力し、自分が憎まれる存在として「確かに生きている」ことを実感したかったのです。
この歪んだ承認欲求は、現代社会で起きる「炎上目的の行動」や「注目されるための過激な行為」とも通じるものがあるような気がします。
スズキは極端な形ではありますが、孤独な現代人の闇を象徴する存在と言えるでしょう。
類家:理性と感情の狭間で揺れる交渉人
頭脳明晰でクールな交渉人・類家は、スズキのクイズに挑み続ける中心人物です。
彼は論理的思考に優れ、感情に流されず冷静に事件を分析していきます。しかし物語が進むにつれて、類家もまたスズキの「ゲーム」に巻き込まれ、感情を揺さぶられていく様子が描かれます。
特に印象的なのは、阿佐ヶ谷駅での爆発を防げなかったときの無力感です。
どれだけ頭を使っても、どれだけ努力しても、完璧には人を救えない——その現実に直面した類家の苦悩は、「正義を貫こうとする者の限界」を示しています。
類家というキャラクターは、読者の視点に最も近い存在です。彼の葛藤や挫折を通じて、私たちもまた「正義とは何か」「努力は報われるのか」という問いに向き合わされます。
石川明日香:母親の愛と罪の狭間
長谷部有孔の元妻・石川明日香は、物語の隠れた重要人物です。
夫の不祥事と自殺によって家族は離散し、彼女自身も路上生活を余儀なくされました。やがて息子の辰馬に発見されてシェアハウスに住むことになりますが、息子が爆弾テロを計画していることを知り、彼を殺害してしまいます。
この行動は、一見すると「息子を止めようとした母の愛」にも見えます。しかし同時に、「息子の未来を奪った罪」でもあります。
明日香は最終的に容疑を否認し、すべてをスズキの仕業だと主張します。これは自分の罪から逃げている卑怯な行動とも取れますが、息子を殺してしまった母親の耐えられない苦しみの表れとも言えます。
明日香というキャラクターは、「善意の行動が最悪の結果を生む」という悲劇を体現しています。彼女もまた、社会の不条理に翻弄された被害者の一人です。
長谷部辰馬:絶望から生まれた復讐者
長谷部有孔の長男・辰馬は、物語の発端となる爆弾テロの首謀者です。
父親を尊敬していた辰馬にとって、父の不祥事と自殺は人生のすべてを崩壊させる出来事でした。家族は離散し、自分の居場所もなくなった辰馬は、シェアハウスで同じように絶望した若者たちを集めます。
そして、「この社会に復讐する」という形でしか、自分たちの存在を示せなかったのです。
辰馬の行動は決して正当化できるものではありません。しかし、彼もまた社会から見捨てられ、居場所を失った若者の象徴です。
「誰も自分を救ってくれなかった」「誰も自分を見ていなかった」——そんな絶望が、破壊という形でしか表現できなくなってしまった悲劇が、辰馬というキャラクターには込められています。
倖田沙良:憎悪と理性の葛藤
若手女性警察官の倖田沙良は、物語後半で重要な役割を果たします。
先輩の矢吹がシェアハウスの爆発で右足を失ったことで、沙良はスズキへの強烈な憎悪と殺意を抱きます。取調室に「スズキを殺す」と飛び込んできた彼女の感情は、まさにスズキが求めていたものでした。
しかし最後、明日香が自爆しようとする場面で、沙良は階段の踊り場で足を止めます。
憎悪に駆られながらも、最後の一線で踏みとどまる——この行動こそが、沙良の人間性を示しています。
沙良というキャラクターは、「普通の人間が憎悪に支配されかける恐怖」を体現しています。誰もが持ちうる感情でありながら、それに呑み込まれるか踏みとどまるかの境界線——それが沙良の葛藤として描かれているのです。
長谷部有孔:物語の根源にある「悲劇の始まり」
長谷部有孔は、すでに故人でありながら、物語全体の根源となる人物です。
優秀な刑事として尊敬されていた彼が、一つの不祥事によって人生のすべてを失い、自殺に追い込まれた——この出来事が、辰馬の絶望、明日香の転落、そしてスズキとの出会いという連鎖を生み出しました。
長谷部のエピソードが問いかけているのは、「一つの過ちで人は完全に否定されるべきなのか?」という重いテーマです。
彼の行為は確かに許されるものではありません。しかし、それによって家族まで不幸に陥れ、息子を復讐者に変え、さらに多くの人命を奪う爆弾テロへと繋がっていく——この連鎖は、「過剰な制裁が生む悲劇」を象徴しています。
長谷部有孔という存在は、物語の「見えない爆弾」そのものだったように思います。
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『爆弾』小説の映画化情報
キャスト
映画『爆弾』は2025年10月31日(金)に全国公開です。豪華実力派キャストが集結し、原作の緊張感と心理戦を映像化します。
| 俳優名 | 役名 | プロフィール・代表作 |
|---|---|---|
| 山田裕貴 | 類家(るいけ) | 警視庁捜査一課の交渉人役。スズキタゴサクと真正面から対峙する頭脳明晰な刑事を演じる。 |
| 佐藤二朗 | スズキタゴサク | 。謎の中年男・爆破予告をする重要参考人役。独特の存在感と演技力で、掴みどころのないスズキの不気味さと異常性を体現。 |
| 伊藤沙莉 | 倖田沙良(こうだ さら) | 交番勤務の若手女性警察官役。先輩・矢吹の負傷によりスズキへの憎悪を抱く重要人物。 |
| 染谷将太 | 等々力(とどろき) | 野方警察署の刑事役。スズキを最初に取り調べる人物。 |
| 坂東龍汰 | 矢吹(やぶき) | 交番勤務の巡査長役。スズキの指示でシェアハウスに突入し、爆発で重傷を負う。 |
| 渡部篤郎 | 清宮輝次(きよみや てるじ) | 警視庁捜査一課特殊犯捜査係・類家の上司役。ベテラン交渉人として穏やかにスズキと対峙する。 |
| 役職 | 氏名 | プロフィール |
|---|---|---|
| 監督 | 永井聡 | 『キャラクター』(2021)で日本アカデミー賞優秀作品賞を受賞。人間の内面の闇を描く演出に定評がある。『爆弾』では、心理戦と緊迫感をリアルタイムで描き出す。 |
| 原作 | 呉勝浩 | 1981年青森県生まれ。2015年『道徳の時間』で第61回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。『爆弾』は『このミステリーがすごい! 2023年版』『ミステリが読みたい! 2023年版』で1位を獲得した代表作。 |
| 配給 | ワーナー・ブラザース映画 |
映画:基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作品タイトル | 映画『爆弾』 |
| 公開日 | 2025年10月31日(金)全国ロードショー |
| ジャンル | サスペンス / ミステリー / 心理スリラー |
| 監督 | 永井聡 |
| 原作 | 呉勝浩『爆弾』(講談社文庫) |
| 配給 | ワーナー・ブラザース映画 |
| 主演 | 山田裕貴、佐藤二朗 |
| キャスト | 山田裕貴、佐藤二朗、伊藤沙莉、染谷将太、坂東龍汰、寛一郎、渡部篤郎 |
| 公式サイト | https://wwws.warnerbros.co.jp/bakudan-movie/ |
原作小説情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| タイトル | 『爆弾』 |
| 著者 | 呉勝浩(ご・かつひろ) |
| 出版社 | 講談社 |
| 単行本発売日 | 2022年4月19日 |
| 文庫本発売日 | 2024年7月12日 |
| 文庫ページ数 | 約500ページ |
| 続編 | 『法廷占拠 爆弾2』(2024年7月31日発売) |
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爆弾(小説)が面白くないのか?:まとめ
爆弾(小説)は、”本当に面白くないのか?”について実際の感想レビューを紹介しました。
また、あらすじ、考察、映画化情報も詳しく見てきました。
最後に、改めて「『爆弾』は面白くないのか?」という問いに答えたいと思います。
『爆弾』は決して「面白くない作品」ではありません。

ユク
個人的にはとても面白かったです。
『このミステリーがすごい!』と『ミステリが読みたい!』の両方で1位を獲得し、映画化も決定している事実が、その証明です。多くの読者が高く評価し、深く心を揺さぶられる作品であることは間違いありません。
ただし、読者との「相性」がハッキリ分かれる作品であることも事実です。
爽快なエンターテインメントを期待して読むと、期待外れに感じると思います。しかし、人間の内面や社会の闇を描いた文学的なミステリーとして読めば、その真価が見えてきます。
「自分に合うかどうか分からない」という方は、まずAmazonの試し読みやオーディブルの無料体験を利用してみることをおすすめします。
最初の数章を読んで(聴いて)みれば、自分に合うかどうかが判断できるはずです。
僕自身は、オーディブルで聴いて本当に良かったと思っています。ナレーターの方の演技が素晴らしく、取調室の緊張感がリアルに伝わってきました。
『爆弾』は、ハマる人には最高に面白い作品です。
爆弾はオーディブルで聴くのがおすすめ!
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