ベートーヴェン捏造は実話？シンドラーが仕組んだ音楽史上最大のスキャンダル！

『ベートーヴェン捏造』という映画が公開となり、“内容は実話なの？”と疑問に思っている人も多いのではないでしょうか？

そのため、この記事では『ベートーヴェン捏造』は実話なのか？を解説。

さらに、原作本『ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつく』の内容、そして藤澤涼架さん出演で注目を集める映画版まで、あなたの「知りたい」にすべてお答えします。

この記事を読めば複雑な歴史的背景も含めて、すべてが明らかになります。

200年前のウィーンで繰り広げられた物語を、一緒に紐解いていきましょう。

ベートーヴェン捏造は実話？

結論から言うと、『ベートーヴェン捏造』は実話です。

この物語の根幹となっているのは、1977年に発覚した「会話帳改竄（かいざん）事件」という史実。（※改竄とは、字や語句を変えること。）

ベートーヴェン没後150年のアニヴァーサリー・イヤーに、国際ベートーヴェン学会で明らかになった衝撃的な事実でした。

会話帳改竄事件とは？

ベートーヴェンは晩年、聴力をほぼ失っていたため、人とのコミュニケーションには「会話帳」と呼ばれる筆談用のノートを使用していました。

1977年の学会発表により、シンドラーがこの会話帳を大量に改竄・破棄していたことが判明。

ベートーヴェンにとって都合の悪い内容を削除し、逆に自分とベートーヴェンの関係を実際よりも親密に見せるような記述を追加していました。

ベートーヴェンの人物像

僕たちが一般的に思い浮かべるベートーヴェンといえば、孤高の天才音楽家。しかし、実際の彼は僕たちの想像とは大きく異なる人物でした。

実際のベートーヴェンはどんな人？

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン（1770–1827）は、古典派からロマン派へと音楽を大きく推し進めた作曲家であり、「楽聖」とも称される存在です。

交響曲、ピアノソナタ、弦楽四重奏曲など、彼が生み出した作品は200年経った今も世界中で演奏され続けています。

晩年は聴力をほとんど失い、孤独や病に苦しみながらも創作を続けた姿はよく知られています。

そして何より「下品で小汚いおじさん」と表現されるほど、人間臭い一面を持っていたんです。

具体的なエピソードを見てみると：

生活面での特徴

• 部屋は常に散らかり放題
• 作曲中に奇声を発することが多い
• 入浴による水漏れで階下の住民から苦情が相次いだ
• 神経質で、コーヒー豆を60粒きっちり数えるこだわりを持っていた

性格面での特徴

• 非常に短気で癇癪持ち
• 気に入らないことがあると激怒する
• 肖像画を描かれることを嫌がっていた
• 好物のマカロニチーズが不味いだけで家政婦や画家に当たり散らした

ベートーヴェンの好物と日常

ベートーヴェンの食生活も決して高級なものではありませんでした。好物は：

• マカロニチーズ
• とろとろのパンスープに卵を入れたもの
• 牛肉
• 川魚（特にコイとカワカマス）

なぜこのような実像が隠されたのか

これらの人間臭いエピソードが後世に伝わらなかった理由こそが、シンドラーによる「捏造」にあります。

シンドラーの人物像

ベートーヴェンの「捏造」を行った張本人、アントン・フェリックス・シンドラー（1795年6月13日–1864年1月16日）とは、一体どのような人物だったのでしょうか。

シンドラーの経歴と背景

シンドラーは現在のチェコ共和国（当時のボヘミア王冠領モラヴィア辺境伯領）メードル出身で、ウィーン大学で法学や哲学を修めたインテリでした。

本業はアマチュアのヴァイオリン奏者で、1822年秋にヨーゼフシュタット劇場の第1ヴァイオリニストとなります。

その頃、ベートーヴェンの気まぐれで出会いからほどなくして住み込みの無給秘書となりました。（実際には無給ではなく、給料をもらっていたようです。）

ベートーヴェンとの複雑な関係

シンドラーは表面的には「忠実な秘書」として公私にわたりベートーヴェンを支えました。しかし、実際の関係性はより複雑でした：

シンドラーの立場

• ベートーヴェンの弟子たちの中で「最も信用の無い人物」
• ベートーヴェン自身も手紙の中でシンドラーに対する不信を表明
• 他の弟子たちからも軽視されがちな存在

生真面目すぎる性格

• 献身的でありながら、次第に強迫的になっていく
• ベートーヴェンへの敬愛が歪んだ支配欲へと変質
• 「自称秘書」と揶揄されることもあった

なぜシンドラーは捏造を行ったのか？

シンドラーが会話帳改竄という重大な行為に至った動機は、はっきりと分かっていませんが、当時の状況から複数考察できます：

愛情と劣等感の複雑な心理

• 憧れの師匠ベートーヴェンを絶対に守りたいという使命感
• 自分とベートーヴェンの関係を実際よりも親密に見せたい願望
• 他の弟子たちに対する劣等感とコンプレックス

理想化への強迫観念

• ベートーヴェンを「苦悩を英雄的に克服した孤高の音楽家」として後世に残したい
• 師匠の人間臭い部分を隠し、聖人化したい衝動
• 自分が「最も理解している弟子」として歴史に名を残したい欲望

シンドラーの巧妙な手法

シンドラーの捏造は非常に計画的でした：

タイミングの計算

• ベートーヴェンの「本当の人となり」を知る人々が亡くなるのを待っていた
• 証人が少なくなった頃を見計らって伝記を発表

改竄の手法

• 会話帳から都合の悪い内容を削除・破棄
• 自分とベートーヴェンの親密さを示す記述を追加
• 「運命はかく扉を叩く」など印象的なエピソードを創作

シンドラーは単なる忠実な秘書ではなく、師匠への愛をこじらせた複雑な心理を持つ人物でした。

ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつく：あらすじ短く紹介

登場人物

名前	関係性
アントン・フェリックス・シンドラー	ベートーヴェンの住み込み無給秘書。ヴァイオリニスト。本作の主人公
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン	天才作曲家。シンドラーが忠誠を誓う師匠。晩年は聴力を失い、会話帳で人と意思疎通していた。
カール・ヴァン・ベートーヴェン	ベートーヴェンの甥。ベートーヴェンが後見人として育てる
カール・ホルツ	ベートーヴェンの弟子の一人。会話帳の重要な証人となる人物
カール・チェルニー	ベートーヴェンの弟子。後にヨーロッパ随一のピアノ教師となる
イグナーツ・シュッパンツィヒ	ヴァイオリニスト、指揮者。ベートーヴェンの友人・協力者
フランツ・グリルパルツァー	オーストリアの劇作家・詩人。ベートーヴェンの葬儀で弔辞を読む
アントン・ディアベリ	音楽出版業者。ベートーヴェンの作品出版に関わる

あらすじ短く紹介

『ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつく』は、音楽史上最大のスキャンダル「会話帳改竄事件」の真相に迫る衝撃的な歴史ノンフィクションです。

物語の始まり

物語は、1977年に発覚した驚愕の事実から始まります。

主人公シンドラーの人物像

本書の主人公は、ベートーヴェンではなく、その秘書として仕えたシンドラーです。

著者のかげはら史帆氏は、これまで音楽史研究において軽視されがちだったこの人物に正面から向き合い、なぜ彼が会話帳改竄という重大な行為に及んだのか、その心理と動機を丹念に解き明かしていきます。

会話帳改竄事件とは

聴力を失ったベートーヴェンが日常のコミュニケーションに使用していた「会話帳」。

物語の構成

本書では以下のような構成で物語が展開されます：

シンドラーの生い立ちから学生時代

• 彼の人格形成とベートーヴェンへの憧憬の芽生え

ベートーヴェンとの出会いと関係性

• 秘書となるまでの経緯と複雑な師弟関係

ベートーヴェンの死後から改竄に至るまで

• なぜシンドラーは捏造に手を染めたのか

罪を隠し通した手法

• どのようにして長年にわたり真実を隠蔽したのか

本書の魅力

この作品は単なる暴露本ではありません。

シンドラーという一人の人間が抱えた愛情と劣等感、憧憬と嫉妬といった複雑な感情を丁寧に描写し、なぜ彼が師匠への愛のために罪を犯すに至ったのかを読者に問いかける、深い人間ドラマになっています。

ベートーヴェン捏造：口コミ・評価

ベートーヴェン捏造の口コミ・評判を本と映画、両方紹介します。

よい口コミ・評価

悪い口コミ・評価

藤澤涼架出演も話題！ベートーヴェン捏造：映画情報

項目	詳細
邦題	ベートーヴェン捏造
原作	かげはら史帆『ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつく』（河出文庫刊）
監督	関和亮
脚本	バカリズム
主演	山田裕貴（シンドラー役）
共演	古田新太（ベートーヴェン役）
出演	染谷将太、神尾楓珠、前田旺志郎、小澤征悦、生瀬勝久、小手伸也、野間口徹、遠藤憲一、藤澤涼架（Mrs. GREEN APPLE）
製作年	2025年
製作国	日本
配給	松竹
企画	松竹
公開日	2025年9月12日（金）
上映時間	115分
映倫区分	G（年齢制限なし）
ジャンル	歴史ドラマ・コメディ
キャッチコピー	誰もが知る天才音楽家・ベートーヴェンのイメージは、秘書の”でっちあげ”でした！

キャスト

俳優名	役名・役柄
山田裕貴	アントン・フェリックス・シンドラー（主人公・ベートーヴェンの秘書）
古田新太	ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン（作曲家）
染谷将太	セイヤー（アメリカ人ジャーナリスト）
神尾楓珠	カール・ホルツ（ベートーヴェンの弟子）
前田旺志郎	カール・ヴァン・ベートーヴェン（ベートーヴェンの甥）
小澤征悦	ヨハン（ベートーヴェンの弟）
生瀬勝久	ブロイニング（ベートーヴェンの旧友）
小手伸也	シュッパンツィヒ（コンサートマスター）
野間口徹	ウムラウフ（副指揮者）
遠藤憲一	ヨハン・ヴァン・ベートーヴェン（ベートーヴェンの弟）
藤澤涼架（Mrs. GREEN APPLE）	フレデリック・ショパン（作曲家・ピアニスト）※映画初出演
井ノ原快彦	リース（ベートーヴェンの愛弟子）※特別出演

主演の山田裕貴がシンドラー、古田新太がベートーヴェンを演じ、Mrs. GREEN APPLEの藤澤涼架がショパン役で映画初出演を果たすなど、話題性の高いキャスティングとなっています。

映画『ベートーヴェン捏造』原作情報

項目	詳細
書名	ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつく
著者	かげはら史帆（かげはら しほ）
ジャンル	歴史ノンフィクション
初版単行本
出版社	柏書房
発売日	2018年10月9日
定価	1,870円（本体1,700円）
文庫版
出版社	河出書房新社（河出文庫）
発売日	2023年11月7日
定価	990円（本体900円）
内容	19世紀ウィーンで起きた音楽史上最大のスキャンダル「会話帳改竄事件」の全貌に迫る
テーマ	ベートーヴェンの秘書アントン・シンドラーによる史実捏造の真相
受賞・評価	宮部みゆき氏絶賛
関連情報	2025年9月12日に映画化（脚本：バカリズム、主演：山田裕貴）

この原作は、著者のかげはら史帆氏が修士論文をもとに書き上げた作品で、2018年の単行本刊行から話題を集め、2023年の文庫化により更に多くの読者に愛読されています。

映画化により再び注目を集め、Audibleでのオーディオブック版も配信されるなど、メディアミックスが展開されています。

あらすじ短く紹介

物語の始まり

物語は現代日本の中学校の音楽室から始まります。

山田裕貴演じる音楽教師が、忘れ物を取りに来た生徒に「みんなには内緒な」とコーヒーをふるまいながら、ある秘密の物語を語り始める──。

19世紀ウィーンでの出来事

舞台は19世紀のウィーン。

耳が聞こえないという難病に打ち克ち、歴史に刻まれる数多くの名曲を遺した偉大なる天才音楽家・ベートーヴェン（古田新太）。

しかし、実際の彼は私たちが想像するような聖人君子ではありませんでした。

運命的な出会い

金も職歴もないヴァイオリニストのシンドラー（山田裕貴）は、少年時代から憧れ続けていた音楽家ベートーヴェンとついに出会い、彼の住み込み無給秘書となります。

しかし、秘書として働くうちに知った実際のベートーヴェンは、癇癪持ちで下品、そして小汚いおじさん──憧れとはまるでかけ離れた人物でした。

愛ゆえの行動

それでもシンドラーは、かつてどん底の自分を救ってくれたベートーヴェンを心から敬愛していました。

そんなシンドラーがベートーヴェンの死後に取った行動とは──？彼は師匠のイメージを”下品で小汚いおじさん”から”聖なる天才音楽家”へと仕立て上げるための壮大な計画を実行に移します。

真実の追求者の登場

一方、シンドラーの嘘に気づき始めたアメリカ人ジャーナリストのセイヤー（染谷将太）が、真実を追及しようと動き出します。

果たして、シンドラーの完璧に見える捏造は暴かれてしまうのでしょうか？

バカリズム流の人間ドラマ

この映画は単なる歴史ドラマではありく、バカリズム脚本による独特の視点で描かれた愛と嘘の人間ドラマです。

師匠への純粋すぎる愛情が歪んだ形で表現されてしまう、現代にも通じる普遍的なテーマが、19世紀ウィーンを舞台に展開されます。

史実をベースにしながらも、どこかコメディタッチで描かれる「音楽史上最大のスキャンダル」の真相。

シンドラーはいかにして真実を塗り替えたのか、そして彼の行動の結末は──？

映画『ベートーヴェン捏造』公式サイト

ベートーヴェン捏造は実話？：まとめ

『ベートーヴェン捏造』の根幹となる物語は、1977年に発覚した「会話帳改竄事件」という実話に基づいています。

僕たちが知るベートーヴェンのイメージは、実は彼の秘書アントン・シンドラーによって巧妙に「捏造」されたものでした。

かげはら史帆氏による原作『ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつく』は、2018年の刊行以来多くの読者に愛され続け、2023年に河出文庫として再刊されました。

そして2025年9月12日、バカリズム脚本・山田裕貴主演により待望の映画化が実現。

Mrs. GREEN APPLEの藤澤涼架さんがショパン役で映画初出演を果たすなど、話題性も抜群です。

ぜひ原作と映画、両方でこの驚愕の実話を楽しんでみてください。